食品メーカーで営業企画の課長をしている三浦です。
部下は6人で、課長になって3年目になります。
課長1年目の私は、朝の過ごし方がひどいものでした。
出社してパソコンを開くと、まず未読メールに飛びつきます。
返信しているうちに会議の時間になり、気づけば昼。
自分の仕事に手をつけるのは夕方からで、残業は月60時間を超えていました。
そんな時期に「朝の瞑想がいい」という話を何度か耳にしました。
ただ、20分座れと言われても無理です。
1分ならできるかもしれないと思い、試しに始めてから約2か月がたちました。
始める前に気になったのが「1分で本当に意味があるのか」という点です。
そこで研究データを調べてみると、言えることと言えないことがかなりはっきり分かれていました。
この記事では、短時間の瞑想について研究で分かっていること、私の2か月の記録、やり方、合わないと感じたときの考え方をまとめます。
目次
先に結論。1分瞑想について研究で言えること
調べた研究を、時間の短い順に並べるとこうなります。
| 時間・期間 | 研究 | 分かったこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1分×その場で1回 | Riedlら(2026年) | 1分の呼吸法の後、不安が下がった | 大学生47人のパイロット研究。反応はむしろ遅くなった |
| 10分×1回 | Norrisら(2018年) | 瞑想初心者の注意課題の成績が上がった | 神経症傾向が高い人には効果が見られなかった |
| 13分×毎日 | Bassoら(2019年) | 8週間で気分・注意・記憶が改善 | 4週間の時点では差が出なかった |
| 1回〜2週間の短期プログラム | Schumerら(2018年) | ネガティブな感情がわずかに減った | 出版バイアスを補正すると効果はほぼゼロ |
ここから言えるのは、1分でも「その場で気持ちを落ち着ける」効果はありそうだ、ということです。
一方で、1分の瞑想を毎日続けて集中力や仕事の成果が上がるかを長期間調べた研究は、今回探した範囲では見つかりませんでした。
「朝にやるほうが夜より効く」と比べた研究も見つかっていません。
なので、「朝1分で人生が変わる」と言い切る記事を見かけたら、少し割り引いて読むのがちょうどいいと思っています。
研究データを1本ずつ見ていく
表だけだと分かりにくいので、私が特に気になった研究を順に見ていきます。
1分の呼吸法で、その場の不安は下がった
「1分」という時間を直接調べた研究で見つかったのは、2026年に発表されたばかりのものでした。
ドイツのアイヒシュテット・インゴルシュタット・カトリック大学などのチームによる1分間の呼吸法についての研究です。
対象は大学生47人。
日常生活で不安を感じた場面で、スマホの指示に従って次の3つのどれかを行います。
- 1分間のボックス呼吸(吸う・止める・吐く・止めるを同じ長さで繰り返す)
- 1分間のサイクリック・サイ(2回続けて吸い、長く吐き切る)
- 何もしない
5分後に測ると、どちらの呼吸法でも、何もしなかったときより不安が大きく下がっていました。
面白いのはその先です。
呼吸法の後は、注意力テストの反応時間がむしろ長くなっていました。
落ち着きはするけれど、すぐに頭の回転が速くなるわけではない、ということです。
厳密に言えばこれは瞑想ではなく呼吸法の研究です。
それでも、私が朝にやっている「呼吸を数える1分」に一番近いデータだと感じました。
もう少し長い10分の瞑想では、アメリカのスワースモア大学などのチームが2018年に発表した研究があります。
瞑想初心者の大学生が10分の瞑想音声を1回聞いただけで、注意力を測る課題の成績が上がりました。
ただし、神経症傾向(不安や心配を感じやすい性格傾向)が高い人には、この効果が見られなかったそうです。
同じ1回の瞑想でも、人によって合う・合わないがあるということです。
1日13分でも、4週間では差が出なかった
次はニューヨーク大学のチームが2019年に発表した1日13分の瞑想を8週間続けた研究です。
瞑想の経験がない18〜45歳の人を2つのグループに分け、片方には毎日13分のガイド付き瞑想を、もう片方には毎日13分のポッドキャストを聞いてもらいました。
結果は、8週間後に瞑想グループでネガティブな気分が減り、注意力や記憶力のテストの成績も上がりました。
ストレスのかかる課題を受けたときの不安も下がっています。
ただし、4週間の時点では差が出ていません。
論文の著者は、この結果を「短い毎日の瞑想で効果を得るのに必要な期間の下限」を示すものだと述べています。
この研究を読んで、私は少しがっかりしました。
13分でも1か月では足りないなら、1分はなおさらです。
ただ、裏を返せば「短くても続ければ変化は出うる」とも読めます。
短時間プログラムの効果は「小さい」
もう少し引いた視点のデータもあります。
カーネギーメロン大学などのチームによる2018年の短時間マインドフルネスのメタ分析です。
1回だけから最長2週間までの短いプログラムを試したランダム化比較試験65件、合計5,489人のデータをまとめています。
ネガティブな感情を減らす効果は「小さいが有意」でした。
ところが、効果が出なかったために発表されていない研究があることを考慮して補正すると、効果はほぼゼロまで縮んでいます。
ジョンズ・ホプキンス大学のチームが2014年に47件の試験をまとめた分析でも、不安や抑うつ、痛みには中程度の根拠がある一方、注意力や睡眠への効果は「効果なし、または根拠不十分」とされていました。
「瞑想で集中力が上がる」という話はよく見かけますが、研究全体で見ると、そこはまだはっきりしていないわけです。
私が朝の1分瞑想を2か月続けた記録
研究の話はここまでにして、ここからは私自身の記録です。
1人の体験なので、データとしての重みはありません。
それでも、同じように忙しい人の参考にはなると思います。
やり方
やっていることは、とても地味です。
- 家を出る前、コーヒーを飲み終えたらダイニングの椅子に座る
- スマホのタイマーを1分にセットし、画面を伏せる
- 目を閉じて、鼻から吸って口からゆっくり吐く
- 吐くたびに「1、2、3……」と10まで数える
- 考えごとをしていると気づいたら、心の中で「考えてた」とつぶやいて1に戻る
息を止める呼吸法は入れていません。
後で書きますが、持病のある人は注意が必要なやり方だからです。
記録は手帳に、やった日は丸、やらなかった日はバツをつけるだけ。
あわせて「始業後に最初に手をつけた仕事」も1行メモしていました。
変わったこと、変わらなかったこと
2か月の手帳を見返して、分かったことを表にしました。
| 項目 | 変化 |
|---|---|
| 朝イチでメールに飛びつく癖 | やった日は減った。先に今日の段取りを決めてから受信箱を開く日が増えた |
| 1分の間に雑念が浮かぶ回数 | 2か月たってもほとんど変わらない。10まで数えきれない日のほうが多い |
| 夜の寝つき | 変化を感じない |
| 午後の眠気 | 変わらない |
| 部下への声かけ | 朝のイライラが減ったせいか、きつい言い方をする日が減った気がする |
一番大きかったのは、1つ目の変化です。
1分座るだけで、出社してからの最初の行動が変わりました。
ただ、これが瞑想の効果なのかは分かりません。
「朝に1分立ち止まる」という儀式があること自体が効いている可能性も十分あります。
1か月目まではほとんど何も感じませんでした。
Bassoらの研究で4週間では差が出なかったことと重なりますが、私の場合は単に慣れの問題かもしれません。
3週目に一度やめかけた話
3週目に大阪へ2泊の出張がありました。
ホテルの朝はバタバタして、3日続けてバツ。
帰ってきてからも「もういいか」と、そのまま2日サボりました。
再開できたのは、「1分なんだから、やらない理由のほうが探しにくい」と思い直したからです。
20分の瞑想だったら、たぶんここで終わっていました。
短さは効果の面では弱点ですが、続けるうえでは一番の武器だと感じています。
1分は「効く単位」ではなく「座る習慣の入口」
研究と自分の記録を並べてみて、今の私の考えはこうです。
- 1分で劇的に集中力が上がることは期待しない
- その場で気持ちを落ち着けたいときには、1分でも試す価値がある
- 毎日座る習慣ができたら、3分、5分と少しずつ伸ばしていく
この考え方に近い本を最近読みました。
エグゼクティブ・コーチの林健太郎さんが書いた、『仕事が速い人が「この1分」でやっていること』の紹介ページで目次を見られる一冊です。
2026年10月に明日香出版社から出ています。
第1章が「朝の1分」で、その中に「超カンタン『1分瞑想』のススメ」という項目があります。
同じ章には「『自分の調子』を確認する」「鏡を見てニコッとする」といった項目も並んでいて、瞑想を朝の流れの1つとして扱っているのが私にはしっくりきました。
ほかにも、第2章には「煮詰まったら目を閉じる」、巻末近くのコラムには「1日9分を自分に投資しよう!」という項目があります。
1分から始めて少しずつ時間を足していく発想なので、瞑想だけでなく朝の段取り全体を見直したい人に向いていると思います。
林さんは、ご自身のnoteでヴィパッサナー瞑想の修行に行った経験についても書いています。
瞑想を体験として知っている人が、忙しい会社員向けに1分まで小さくした、という印象を受けました。
出版社のページにある編集部のメッセージに「全部を完璧にやらなくて大丈夫です」とあります。
40項目すべてを試す必要はなく、気になったものを1つ選べばいいという姿勢で、三日坊主気味の私にはありがたい作りでした。
合わないと感じたときに知っておきたいこと
最後に、瞑想が合わないと感じたときの話もしておきます。
厚生労働省の事業として運営されている統合医療の情報サイト「eJIM」の瞑想とマインドフルネスについてのページには、6,000例以上を対象にした解析で、参加者の約8%がネガティブな経験を報告したと書かれています。
多かったのは不安や抑うつで、その割合は心理療法で報告されている割合とほぼ同じだそうです。
安全なものだと思い込んでいたので、この数字には驚きました。
私が気をつけているのは、次のような点です。
- 雑念が浮かぶのは失敗ではない。気づいて戻ること自体が練習になる
- やっているうちに不安やざわつきが強くなるなら、無理に続けない
- 体調が悪い日は休む。1日休んでも、また翌日から始めればいい
- 気分の落ち込みが続くときは、瞑想で何とかしようとせず医療機関に相談する
米国国立衛生研究所の国立補完統合衛生センターも、瞑想を通常の医療の代わりに使わないよう呼びかけています。
息を止めるタイプの呼吸法にも注意が要ります。
厚生労働省の働く人向けメンタルヘルスサイト「こころの耳」では、「止める呼吸」について、治療中の人は事前に主治医に相談し、血圧異常や脳・循環器系に不調のある人は控えるよう案内しています。
妊娠中の人も控えるよう書かれています。
私が「数えるだけ」のやり方にしているのは、このためです。
まとめ
朝の1分瞑想について、研究と私の体験から分かったことを振り返ります。
1分の呼吸法には、その場で不安を下げる効果を示した研究があります。
一方で、1分の瞑想を毎日続けて集中力や仕事の成果が上がるかを確かめた長期の研究は、今のところ見つかりませんでした。
13分の瞑想でさえ、効果が出たのは8週間続けてからです。
私の2か月では、睡眠や午後の眠気は変わりませんでした。
それでも、朝イチでメールに飛びつく癖が減り、1日の始め方は確かに変わっています。
1分は、効果を出す単位というより、座る習慣を作るための入口です。
明日の朝、タイマーを1分にセットして、10まで数えるところから始めてみてください。
雑念だらけでも、それで十分です。